空気で育つの?正しい扱い方を知って、エアプランツを元気に育てよう
”エアプランツ”としておなじみの土いらずで育てられる植物、ティランジア。
コンパクトで花も綺麗なため、とても人気がありますが、空気中の水分だけで育つことから「放っておいても大丈夫」といった誤った情報が広まったため、失敗してしまった人も多いのではないでしょうか。
確かにエアプランツは乾燥に強く、他の植物に比べると手がかからないかもしれませんが、日本の環境で元気に育てるためには、エアプランツに故郷を思い起こさせるちょっとした工夫が必要です。
この記事では、これからエアープランツを楽しみたい方へ、エアープランツの特徴やエアープランツを育てるときのポイント、エアープランツにぴったりな植木鉢を厳選してご紹介します。
エアプランツってどんな植物?
エアプランツとは
エアプランツは、空気中の水分を吸収し、土がなくても育つことから、プロメリア科ティランジア属ティランジアの通称として広く使われています。
主に北アメリカ南部から西インド諸島、南アメリカなど熱帯アメリカを中心に、世界中に原種だけでも600種もあり、園芸品種を含めると2000種を超えるといわれています。
その多くは樹木や岩、サボテンなどに着床して、限られた雨水や立ちこめる霧などから水分を取り込んで生きています。
そのバリエーションの豊富さは、過酷な環境だからこそ生まれた、生命力に満ちあふれた姿なのです。
エアプランツの特徴
エアプランツは、春から初夏に生長し、夏は暑さで生育が鈍りますが、夏の終わりから秋にかけて再び生育するというライフサイクルをおくっています。
他の園芸植物に比べて生長はゆっくりで、株は1~2年かけて少しずつ成熟していき、やっと一回り大きくなる程度です。
エアプランツの最大の特徴は、葉の表面にあるトリコローム(毛状突起)から水分を吸収できること。細長いヒモのような形が特徴的で、スパニッシュモス(ウスネオイデス)も日本に最初に渡ったときは植物としてではなく、荷物を梱包するための緩衝材だったそうで、自生地では雑草扱い。
さまざまな環境に自生するエアプランツは、そんな過酷な環境にも耐えられるよう、乾燥してもめったに枯れない高い順応性を持ち合わせているのです。
エアプランツがヨーロッパやアメリカでは観賞用の植物としてさほど注目されず、日本や中国などアジアで人気なワケは、外観は小さくて地味だけど、実はなんとも不思議で得体の知れない謎めいた性質と、よく見ると一つ一つのフォルムが実にかっこいい、ちょっとマニアックな面白さに引かれるからかもしれません。
もう一つの魅力、美しい花
エアープランツのもう一つの魅力が、エキゾチックで独創的な花です。色も形状も実にさまざま。エアプランツ栽培のお楽しみの一つでもあります。
エアプランツは株が成熟すると花をつけます。開花は不定期で、1年に何回か咲くこともあれば数年に一回の場合もあり、花は2週間~1ヶ月ほど楽しめます。
開花期は春や秋など季節の変わり目が多く、高温の刺激によって夏に咲く種類もあります。
一般的には、花芽が付くころには子株ができます。花を咲かせるのは植物にとっては大仕事。株自体に体力があれば何度も花を咲かせますが、通常は花を咲かせた後、親株は子株に栄養を与えると役割を終え、半年ほどで枯れてしまいます。
株の成熟度や環境は花の咲きやすさに影響しますが、花を楽しみたい場合は、咲きやすい種類を選ぶことも一案。
イオナンタやストリクタ、ブルボーサ、ゲミニフローラなどは手に入りやすい品種で、しかも花も咲きやすい品種です。
葉焼けを恐れずによく日に当てて育てると、花が咲きやすい傾向にあるようです。
エアプランツの品種
エアプランツは、限られた水分を受け止めるために部位をさまざまに進化させることで生き残ってきました。
エアプランツは大きく「エアータイプ」と「タンクタイプ」に分けられ、エアータイプは主に空気中の水分を葉から吸収し、タンクタイプは根元に水分を貯めることを生存戦略に選んだ種類です。
エアータイプの特徴
ティランジアの大半はこのタイプです。
葉色によって大きく「銀葉タイプ」と「緑葉タイプ」に分けられます。
葉は葉の表面のトリコローム(毛状器官)の形状や量によって銀色に見えたり緑色に見えたりします。
銀葉と緑葉でおおむね必要な水分や日照の好みを分けることができます。
銀葉種
トリコロームと呼ばれる、水分や養分を吸収する白い毛をまとい、葉全体が白っぽく見えるタイプです。
水分を吸収する力が強いので、比較的乾燥には強く、緑葉タイプに比べると耐陰性も強いのが特徴です。
水分を取り込みやすいので蒸れやすく、上手に育てるためには風通しが重要。
密封性の高いテラリウムなどで長期に楽しむよりは、吊るすなど風通しのよい置き方がおすすめです。
生長もゆっくりで、多少暗い環境でも弱りにくいので、室内でも育てやすい種類です。
緑葉種
トリコロームをまとっておらず、葉全体が緑色をしたタイプです。
比較的雨の多い地域に自生しているので、生長が早く、明るい場所を好みます。
銀葉種に比べ、強い日に弱く、乾燥にも弱い性質です。
蒸れには比較的強いので、テラリウムなど多少空気がこもるような飾り方も可能です。
水をたっぷり与えると生き生きと育つ種類なので、観葉植物的な育て方ができ、ビギナーにもおすすめです。
タンクタイプ
葉が肉厚で折れやすく、頭でっかちで不安定なため、ほとんどが鉢植えにして販売されています。
葉数は少ないものから何重にもなるものまでさまざま。葉に特徴的な模様が入るなど造形的に豊かなものが多く”タンクブロメリア”のひとつとして注目されています。
美しい色を出すためには日によく当てることが必要ですが、強すぎる光では葉焼けしてしまうので、夏の管理は注意が必要です。
初心者必見!エアプランツの正しい育て方
「水やり」「風通し」「強過ぎない光」、ポイントは3つ
エアプランツは一般的なイメージより水を好み、強すぎる日光も苦手なので、風通しのよい明るい日陰で管理すると上手く育ちます。
霧の多い山地や乾燥した砂漠地帯、気温の高い熱帯雨林など、エアプランツの育つ環境はさまざまで、自生地の環境によって性質は少しずつ異なりますが、一般的に流通している品種は気難しい管理は不要。
土に与える一般的な植物の水やりと異なり、植物に直接霧吹きでシュッシュッと水を与えるエアプランツは、水加減が直接目に見えるので、初心者でも水分量が分かりやすく、あげすぎても水滴を振り落とせばよいので、植物を育てることに苦手意識がある人にも、これから植物の栽培をはじめたい人にとっても気楽に育てられる植物です。
エアプランツは、さらさらと流れる風にゆられて「しっとり」と「乾燥」を繰り返しながら、ゆっくりと育っていく植物です。
エアプランツの選び方
エアプランツは種類も多く、形も実にさまざまなので、何度か売り場に通って好みのものを選びましょう。
はじめてエアプランツを選ぶときは、なるべく入荷したての苗を選ぶことが大切です。
エアプランツはガーデンセンターや花屋だけでなく、いまは雑貨店などでも買うことができます。
光量の少ない場所でも育つエアプランツですが、店内の照明だけでは暗すぎます。また、長い時間風に当たることができず過湿状態が続いたり、極度の乾燥によって株が弱っている場合もあるので注意します。
株は水分を十分に含んで、全体にふっくらしたものを選びます。
水分を含んだ元気な株は葉がみずみずしく、つやがあって、手に取ると重みを感じます。
中心部分はとくに蒸れて腐りやすいので、中心の葉がイキイキしていることが大切です。葉がしおれていたり、形が崩れているものはなるべく避けます。
花が咲いていると、観賞したくてチャンスに思いがちですが、花を咲かせるためにとてもエネルギーを使っているので、これから育てる株としてはあまりおすすめできません。
もし見た花が気に入った場合は、同じ種類がほかにないか商品タグを目印に探してみましょう。
家に連れて帰ったら、霧吹きやジョーロでたっぷり水を与えます。
エアプランツの置き場所
エアープランツは風通しのよい、木漏れ日のようなやわらかな光を好みます。
年間を通して室内でも育てられ、暗い場所にも耐えることはできますが、カーテン越しや明るいリビングなど、なるべく明るい場所を選びましょう。
風通しのよい場所であれば、腐ってしまうことはまずありませんが、接触面はなるべく小さいほうが無難。
ネットや石、木などの上に置いたり、天井などから吊るす方法でなるべく蒸れを防ぎましょう。
夏の直射日光は大敵です。
とくに、無風状態で水やりした直後に夏の強い日差しに当たると、葉が傷むので注意しましょう。
トリコロームに覆われていない緑葉種は葉焼けしやすいのでより注意が必要です。
日本では、寒さが厳しい冬を除いて風通しのよい屋外で育てる方が生育には適していますが、室内でも窓辺から1~2mくらいの場所に置いて、部屋の換気ついでに定期的に風に当ててあげれば順調に育ちます。
元気がなくなってきたと思ったら、屋外に出して外気に当てると効果的です。
外に出した日の夕方には、しっかり水を与えて夜風にあててあげましょう。
高温多湿には極端に弱いので、屋外で育てる場合にも夏は風通しのよい日陰に移し、日の当たらない軒下などに吊るして休ませます。
最低気温が10℃以下になったら室内に取り込みます。
エアプランツの水やり
水を与えなくても枯れにくいだけで、実は水が大好きなエアプランツ。
上手に育てる一番のポイントが水やりです。
エアープランツは夜から朝に気孔が開いて空気中の水分を取り込むので、夕方にあげると効果的です。
春から秋の成長期にはとても水を欲しがりますので、週に2~3回、毎日水やりしても喜ぶほどです。
ベランダやシンクなどで、霧吹きで10回を目安に。株の裏側や根元にもまんべんなく、水が滴るほどにしっかりと与えます。
冬は夜間にとても冷え込みことがあるので、週に1回程度午前中に与えます。
庭の木の下に吊るす方法はティランジアの生育には最も理想的な環境で、雨に当てることもとても良いことですが、2日以上濡れたままになることは嫌います。
長雨の場合は雨の当たらない場所に必ず移動しましょう。
トリコロームが多く、白く見えるほど乾燥に強いので、とくにトリコロームが少ない緑に見えるものは乾かし過ぎに注意します。
また、根元が壷のように膨らんだ「つぼ型」と呼ばれる種類は根元に水が溜まりやすく、水分が多いまま放置すると腐ってしまうことがあるので、逆さにして数回振ってしっかりと水切りしましょう。
水道の蛇口から出した勢いのある水を直接流しかけるのもNG。
株の表面の大切なトリコロームがなくなり、株にダメージを与えてしまいます。
乾燥がひどい場合は水を張ったバケツに植物をつけて、直接水を吸わせる「ソーイング」も効果的です。
目安としては5~6時間、水から上げたらしっかりと水切りします。
ただし、この方法は短期の旅行などで水やりができず、株がしおれてつぶれたようになってしまったり、葉が内側に丸まるほど乾かし過ぎてしまったときの応急処置。
毎回の水やりをソーイングで代用することはよくありません。
ソーイングは、葉を傷つけないように大きめの容器で行いましょう。
流木などに固定している場合は、土台ごとソーイングして構いません。
エアプランツの肥料
肥料がなくても育ちますが、早く大きくしたいときや葉の色ツヤをよくしたいときには効果的です。
生長期の4~6月、9~10月に、既定の2倍以上に薄めた液体肥料を与えると生育がよくなります。肥料は、必ず株がぷっくらとした元気な時に与えます。
株が乾燥して弱ったときや生長が緩慢な冬は避けましょう。
また、回数が多いと肥料焼けすることがあるので「生長期に、月に一回」を目安に与えます。肥料を混ぜた水やりをした次の水やりでは、水だけにして葉の表面についた肥料を洗い流してあげましょう。
育て方のポイント
栽培方法は、水やり・風通し・日照の3つのポイントを押さえるだけ。
窓辺やベランダ、庭などに置いて、“風”を意識して育てましょう。
- 柔らかな光
- 十分な水やり
- 適度な風
飾り方の基本をおさえて、エアプランツを飾る
どんな素材、どんな場所にもマッチ
エアプランツの人気の理由の一つがアレンジのしやすさです。
どんな雑貨とも合わせやすく、陶器の皿、ブリキ缶、ワイヤー、巣箱やフレームなどと自由に組み合わせることができ、その都会的でクールな印象からインテリア雑誌にも特集としてよく取り上げられ、さまざまな雑貨との組み合わせが提案されています。
コロンと転がしておくだけでも絵になる存在ですが、そのフォルムの美しさ、ユニークさはちょっと手をかけるだけで見違えるほどお洒落になります。
棚や壁だけでなく、洗面所やキッチンテーブルなど置き場所を選ばないのは、土を使わないエアープランツならでは。
エアープランツは、オブジェのような使い方ができて、なおかつどこにでも置くことができる特別な植物なのです。
エアプランツの性質に合わせれば、より元気に育つ
着床させるのが本来の姿
もちろん、軽石やバークチップの上に転がしておくだけで育つエアプランツですが、自生地では木やサボテン、岩などに少ない根をしっかりと絡ませて、しがみついて育つので、栽培する場合も流木などを用意して根を出させ、根からも水分や養分を吸収させてあげたほうが生育が安定し、元気に早く大きくなります。
銀葉種と緑葉種それぞれのおすすめの方法をご紹介します。
銀葉種におすすめの方法・・・着床材に固定する
バークチップやヘゴ板、流木など、着床材に固定する方法は、持ち運びや水やりが簡単にできるだけでなく、直接持ち上げて葉先を痛めてしまうこともなくなるので理想的です。
この方法は、とくに水の好みが普通程度の「銀葉種向き」です。
作業は一年中できますが、中でも4~9月は最適です。
厚みのない着床材の場合は、キリで2箇所穴をあけて、底に針金を通して固定するのが一般的。
枯れた根が付いているものは、さらに1つ穴をあけて、そこに枯れた根を通して固定すると発根した後により安定します。
流木のように凹凸のある着床材の場合は、座りのよい場所を探して、細い針金でくるりと巻き付け根元を軽く押さえます。
基本のインテリアバークや流木だけでなく、表面がザラザラとして根が張りやすく、植物に害のない素材であれば、どんなものでも着床させることができます。
ポイントは、より水分を保持できる素材。気泡の多く入ったコンクリート素材や素焼きの鉢なども好適です。
根が伸びてくるのは元気な証拠。
2~3ヶ月でしっかりとした根が確認できれば順調です。
緑葉種におすすめの方法・・・植木鉢に植え込む
根が抜き出しの状態で販売されているものでも、鉢植えにすると生育が早くなるものもあります。適期は4~5月。
蒸れないように浅植えにして、軽石とバークチップ1対1の割合で植えます。水はけのよい観葉植物の用土でも構いません。
緑葉の中でも、キアネアのようにランのような平葉の種類は水が大好きで、根からも水を吸収し、鉢から常に上がってくる湿度も好みます。もちろん水を筒の中に貯めておくタンクタイプは、鉢植えで育てるのが一般的。
素焼き鉢からプラスティックの鉢まで水を好む度合いによって使い分けできれば、相当な上級者ですが、ほとんどの種類は素焼きの鉢で十分、元気に育ちます。
この方法では、インテリアバークに着床させづらい曲がった形の株や生長して大きくなってしまった株の場合にも便利。
素焼き鉢に根元を挿しておくだけで鉢の内側に直接根を張ります。
大きめの軽石やバークチップを入れて軽く押さえるだけでもいいでしょう。
もちろん銀葉種を育てる場合もできる方法です。
エアプランツにおすすめの植木鉢とは
エアープランツを購入したら、まず用意したいのが霧吹きです。
エアプランツ栽培では、日課と言ってもよい作業になりますので、あまり小さなものは何度も水を補充しなくてはならず手間がかかるので不便です。1000mmは水が入ると結構手首に負担がかかる重量になりますので、女性には使い勝手がよい500mmがおすすめです。
植木鉢には様々な種類があるので、エアープランツとの相性のよい飾り方として、提案できるものは4つあります。
それは「皿状のものに置く」「植木鉢に入れる・植える」「ガラスのテラリウムに飾る」「プラントハンガーを利用して吊るす」の4つの方法です。
皿状の鉢や植木鉢はそのままエアープランツを置くこともできますが、バークチップや石などを入れて、根を張らせることで管理がしやすくなります。
テラリウムはエアープランツの定番の飾り方の一つです。
記事でもお伝えしましたが、とくに乾燥にも強い銀葉タイプとの組み合わせがおすすめ。緑葉タイプには、なるべく間口が広く、風が流れ込みやすい設計のものや定期的に外に出して風にあてるなど、長期間テラリウムの中だけで栽培しないように気を付けましょう。
吊るすことができるのもエアプランツの魅力。雑誌などでも紹介されることが多くなったプラントハンガーを利用する飾り方では、小さなガラスの入れ物やお洒落なポットに入れるだけでなく直接プラントハンガーに入れてお手軽に吊るすこともできます。
これはキセログラフィカのような大型なものやウスネオイデスのようなヒモ状のものにおすすめの方法です。
エアプランツにぴったりな植木鉢ランキング
丸みのある石をモチーフにしたお皿のようなプランターです。
エアープランツをそのまま置いたり、くぼみ部分にバークチップや石を敷いて飾ることができます。
流木の置き場としても活躍。インテリア小物も一種に飾れて便利です。
2号、3号の極少サイズのかわいらしいモスポットです。
水分も染み込みやすい材質なので、根がしっかりかかります。
口径部分にヒモや針金をかければ、そのまま木に引っかけることも出来ます。
釣り下げるエアープランツ定番の飾り方の一つ、ハンギング。
ドロップ(涙)形や球形もステキですが、タブタイプにバークチップや軽石を入れて飾るとお洒落。
やわらかな金属ワイヤー付きなので、屋外で風に当ててあげるときも木などに引っかけやすくて便利です。
エアプランツを育てるうえで、霧吹きは必需品。
スプレイヤーはドリガーを握ったときだけでなく、離すときも噴射するので効率的。
どの角度に向けても水を吸い上げてくれるので、機能性は抜群です。
女性にも楽々使える容量500mm。